今回の診療報酬、介護報酬の同時改定について思うこと

2024/06/01

 今回の診療報酬と介護報酬の同時改定は従来と異なり非常に複雑であり異様な感じを受けます。冷静にみると現政権が掲げる賃上げと医療DXに対する対応を露骨に反映したものと考えられます。社会保障費の削減は当然の事として、+0.88%のプラス改定といいながら、実質的には大幅なマイナス改定になっています。賃上げに対する対応はすべて看護職員等の処遇改善に使用しなければならない「ベースアップ評価料Ⅰ、Ⅱ」という不思議な項目新設されました。初再診料や入院料の引き上げも行われましたが、この大半はその他の職員や40歳未満の勤務医などの処遇改善に使用せざるを得ない仕組みになっております。介護従事者に対しても「介護職員等処遇改善加算」が統合整備されました。あまり注目はされておりませんが、今回の介護報酬の改定で現在9段階の第1号被保険者(65歳以上)の介護保険料を13段階に変更されました。高所得者の標準乗率を引き上げ、低所得者の標準乗率を引き下げることにより、今後の介護給付費の増加を見据えて第1号被保険者間での所得再分配機能を強化することにより低所得者の保険料上昇の抑制を図るとされております。保険料の多段階化によって制度内での対応が強まることを踏まえ低所得者の負担軽減に活用されている公費の一部を介護現場の従事者の処遇改善に使用することになっています。公定価格である診療報酬、介護報酬に対するベースアップの手当ということでしょうが、算定も複雑であり令和6年度2.5%、令和7年度2.0%を行うことができるのでしょうか疑問です。複雑な仕組みを作り、結果的に知らない間に国民が費用の一部を負担させられています。連合の集計によると今年の平均賃上げ率は3.57%、消費者物価指数の上昇率は2.5%と見込まれております。定額減税も行われますが、円安による物価上昇も懸念されております。30年ぶりのデフレ脱却を目指して物価上昇を上回る賃金の上昇、実質賃金の増加は実現できるでしょうか。他産業への人材流失を食い止めることができるでしょうか。大いに疑問です。

(神戸市O.T.)