市場原理では医療は滅びる!! 郵政民営化の次は社会保障、医療改革がターゲット

2005/07/25

郵政民営化の次は社会保障、医療改革が国会の俎上に上るようである。 医療費については、総枠管理制が大きな問題として取り上げられるようである。また厚生労働省は医療費の「適正化」の手段のひとつとして、公的保険に免責制の導入を検討しており、さらに都道府県単位で「保険者協議会」を設置し、保険者間の連携のもと保険者機能強化による、選別医療、管理医療を推し進めようと目論んでいる。これは国民の医療費負担を増大させ受診抑制につながるばかりか、混合診療解禁への口実を与えかねない重大な問題である。民間医療保険会社も公的保険から外れる部分で商売をしようと虎視眈々とねらっている。     
これらはいずれも、フリーアクセス、出来高払い、リーズナブルな医療費での公正、平等な医療提供体制を否定するもので、世界に冠たるわが国の国民皆保険制度の崩壊につながるものである。

昨年来、規制改革民間開放推進会議に対峙し日本医師会が中心に立ち上げた国民医療推進会議が中心となり「混合診療解禁絶対反対」の署名運動を全国的に展開し、一定の成果をあげ、にわかに全面解禁にはいたらなかった。しかし市場原理をグローバルスタンダードとするアメリカの圧力と、経済財政諮問会議の竹中氏や、規制改革民間開放推進会議の宮内氏をはじめとする経済界の強い力が、社会保障の根幹である医療を巨大マーケットと見立てて金儲けのターゲットにしようとしていることには変わりはない。

市場原理や国家財政的見地から医療を論じ、国民医療に対する理念もない政権をこのまま許していいのだろうか。李 啓充先生が著書「市場原理が医療を滅ぼす」(医学書院)で書かれているアメリカでの失敗を敢えて真似しようとする勢力は国賊と呼ばれてもおかしくない。いのち、健康が弱肉強食の営利の餌食にならないよう国民のために絶対阻止しなければならない。

医師には、医療における不平等や差別を排除するために積極的に活動する社会的責任があるとも李先生は書かれている。そのためには患者と政治家への働きかけが必要になる。医師と患者が問題意識を共有できる機会の構築と、コミュニケーションの強化が必要になるが、日々の診療のなかで医師と患者がしっかりと向き合って信頼関係を強化する事が大切である。そうすれば診察室で患者から医療政策に対する怒りや疑問がもっと出てくるはずである。土台が出来れば例えば李先生の著書を薦めること等も良い手段となりうる。また地元の市会議員、県会議員の先生方に医師、患者、社会全体のために医療問題を真剣に考えてもらえるよう、充分理解してもらえるような労力も不可欠であろう。

(神戸市 O氏)
[ 2005.07.25 ]