リフィル処方箋とその結末

2022/06/01

 本年度の診療報酬改定によりリフィル処方箋が導入された。同処方では、安定した症状の患者は1回の処方で最大3回にわたって薬をもらうことができる。患者にとっては薬のためだけの通院がなくなり、470億円程度の医療費抑制効果があるとされている。医師については時間的余裕が生じると期待されている。従来、日本医師会はリフィル処方箋の導入には反対の立場であった。導入後は予想通り、医師が利用を拒否するケースが続出している。処方箋に「リフィル可」という欄が設けられ、医師がそこにチェックを入れることでリフィル処方は可能になる。しかし、チェック欄が印刷されてなかったり、印刷されていても線や記号で消されていたりすることが散見されている。これは現在違法行為ではないという見解である。医師にとっては再診料、医学管理料、処方箋料などの収入が減少するため導入に反対なのは自明の理である。そしてリフィル処方箋導入の経緯も不明である。診療報酬プラス改定のための裏取引説などの噂も絶えない。日医中川俊男会長によればリフィル処方箋は、日本医師会として了解するかどうかというやり取りの中で導入されたのではなく、最終的には財務大臣と厚労大臣の両大臣折衝の中で、厚生労働省は医師の処方権を明確に確保した上で導入する、いわゆる諸外国のリフィルとは違うということで、導入されたと説明している。さらに事前に私が単独で導入決定したということではないと見解している。
 さて中川会長は、5月23日、都内で会見を開き、6月に行われる次期日医会長選への不出馬を決断したと語った。その理由として日本医師連盟の組織内候補である自見はなこ氏の参議院議員選挙を控えていることを挙げた。「私が出馬しないことで、日本医師会全体の分断を回避し、組織として一致団結して夏の参院選に向かうことができるのであれば本望であるとの結論に至った」。というのが建前である。中川会長のスキャンダル、リフィル処方箋の不可解な導入などを巡り、内部幹部からの不満が噴出しているのも事実で、日医常任理事の松本吉郎氏という対立候補が出たことで、自身の形勢が不利になったことが決定的な要因と言われている。会長選挙に関して日医内の混乱はしばらく続きそうだ。薬の再処方は可能となったが会長自身の再選は不可能になったという皮肉な結末である。
 我々末端の医師連盟会員は今何をすべきか、全国区参議院候補自見はなこ氏の選挙応援を地道にするしかないのでは。

姫路市M.M