医師不足に思う

2008/10/08

2004年より始まった臨床研修制度により地方と都市での医師偏在がおこり地方病院の医師不足が顕著になってきている。さらに科によっても心身ともに疲弊していると言われる小児科、産科の医師不足など科の医師偏在も起こっている。このため政府は10年間かけて医学部の総定員を現在(約7,800人)の1.5倍となる約12,000人に増やすことや、小児科、産科などの医師不足が著しい科に重点を置き研修期間を長くする特別コースなども考えている。
しかし、この臨床研修制度が、医学生にとっては、どうなのであろうか。

現実問題として医学生のなかには以前から卒業後は大学病院に縛られず、魅力のある病院(最先端の設備や良き指導者がいる)で研修したいと願うものもおり、この制度を歓迎する医学生も多数いるのではないだろうか。

実際マッチングにおいても設備の整った良い指導者のいる病院等を多数希望しており、その病院は、都市部に集中しているようである。残念ながら、地方の病院への希望は少ないと思われる。医学生にとってはごく自然な姿であり、早くから研修病院を検討するようになり、将来に対してしっかりと見据えている感がある。

一方、医師偏在に対して、特に地方の大学の入学者のうち地元の学生を一定数合格させることや、入学時に学費などを免除して卒業後は一定期間地方の病院に赴くことを義務づけている大学も有るが、焼け石に水と思われる。要は、その病院が、働く医師にとっても地域の住民にとっても魅力的な病院であることが必要であり、このような病院作りをすることが大事なのではないだろうか。

実際、地方にも人気のある病院も有り、そこは、研修するに十分な施設と指導者がいるのである。小児科、産科にしても、診療報酬を他の科より増やすことはもちろんのことだが、働きがいのある魅力的な科であるようにしなければならないし、そのためにも医療事故問題に対して政府の適切な対応に期待するものである。

また、医師数の問題にしても、今後入学者数を増やしていくことになるが、1997年の閣議決定された医師数の削減のために医師国家試験の合格者数を調整してきている。1997年から2006年までの医師国家試験の合格者数は2001年の8,374人を除いてすべて8,000人以下であり10年間において受験者数87,312人で合格者数は76,766人で合格率は87.9%である。

厚生労働省は、来年度からでも合格率を上げて少しでも医師数を増やしていくべきであり、それが医師の資質を低下させることにもならないと思う。

(宝塚市 Y氏)
[2008/10/8]