新3本の矢

2016/03/16

 安倍晋三首相は、平成27年9月、アベノミクスの新しい3本の矢を打ち出した。今回の第1の矢は「希望を生み出す強い経済」であり、具体的には2020年頃に名目GDPを600兆円にする。第2の矢は「夢を紡ぐ子育て支援」とされ、これによって希望出生率 1.8を2020年代初頭に実現したいとする。そして、第3の矢は「安心につながる社会保障」であり、2020年代中頃には介護離職をゼロにするとの目標が掲げられている。
 まず、2020年頃に名目GDPを600兆円にするという目標は、名目3%成長を続ければ2020年度の名目GDPは概ね600兆円に達する。しかし医療業界に対しては診療報酬削減の方針をとってきており、新第1の矢の方向とは逆の政策である。医療業界に関係する人は300万人とも言われその原資は診療報酬そのものである。そのためか診療報酬本体のみわずか0.49%増という改定になったのかもしれない。
 現在の1.4程度の出生率は、最低1.23まで落ち込んだ出生率をこれまでの少子高齢化対策でようやく実現できた数字と考えるべきである。仮に、今後10年足らずで出生率を1.8にまで上げようとすれば、その手段はさらに子育て世代への税負担の軽減、児童手当てなどの増額以外にないと思われるが、高齢者の社会保障費が増大する中、子育て世代への財源
をどのように捻出するのか疑問である。
 2020年代の中頃とは、団塊の世代が一斉に後期高齢者に突入する頃であり、介護を受ける人が急増する時期である。政府はこれまで施設介護から在宅介護へという方向で介護政策を進めてきている。もし介護離職をゼロにすると言うなら、今後は施設介護を重視の方向転換をせざるを得ない。介護のための財政負担の大幅な増加が必要である。
言うは易く行うは難し。

(姫路市 M氏)