“病院から在宅へ”

2018/10/23

 人生の終の棲家は住み慣れた自宅で。政府(実際はお役人)がこのような声を挙げたのは約20年前、そして18年前より介護保険制度の開始と共に「看取り加算」というものが設定されました。さて、この「看取り加算」には最初からちゃんと隠された仕掛けがあったのです。“病院から在宅”へ響きはとても良い響きですね、さすがは東大出身お役人集団の文言です。ところが、共働き核家族化の現代社会でいったい誰が自宅で介護できると言うのでしょうか。ここで登場するのが伝家の宝刀「看取り加算」これは保険上在宅扱いになる特養やグループホームで適応される大きな加算点数です。介護保険制度が発動する前には施設内で病気により体調を崩された高齢者は、病院に搬送されて適切な治療を受けて施設に戻っていました。ところが今はどうでしょうか、病気になった高齢者を病院に搬送すると施設は一時的にも空床ができます。たとえ肺炎であろうが決して病院には搬送せず、この状態を全て老衰の一言で片づけてしまい、「看取り加算」を奪取するのです。こんなおいしい話を企業が放っておくわけもなく企業主導の高齢者施設は濫立し、経営学に疎い私たち医師は空床率が上がる一方です。お役人の狙い通り高齢者にかかる医療費を削減し、新しく介護保険という名目で国民からせしめる。つまり高齢者には医療保険を使うなとでも言いたいのでしょうね。純粋に命と向き合いながら働いている私たち医師は、結局のところは机上で計算機をたたいているお役人の手のひらの上で踊らされているのでしょうか。こういった官僚の策略を正しい視点で審議してくださる代議士の先生が一人でも増えてくれる事を願う今日この頃です。

三田市 F.H.