院外心停止とAEDの適正な設置場所

2023/01/01

 わが国で一般市民のAED使用(PAD)が認められて18年になります。
この間、バイスタンダーによる院外心停止の除細動実施率は50%を超え、目撃のある心原性心停止の場合、社会復帰率はこの10年で4.1%から8.6%に改善し、VF/VTに限定すると25%に達しています。また2021年にはオートショックAEDも導入され、PADは新たな段階に入ったといえます。
 国内のAEDは現在67万台といわれます。コンビニは6万店舗ということで、偏在はあるにしても、コンビニ1件の周辺にAEDは11台あるという計算になります。
携帯電話が普及した昨今でも公衆電話は14万台あり、市街地の場合500m四方に1台の設置が電気通信事業法によって定められています。しかしながらAEDは医療機関、公的施設を除いて、民間企業や団体の管理者が自己資金で自発的に設置したものであるため、心肺停止の起きやすい場所に戦略的に置かれているわけではありません。
 一次救命処置のアルゴリズムでは、呼吸と頸動脈拍動の確認は10秒以内、胸骨圧迫後の人工呼吸は10秒以内に2回、胸骨圧迫は交代時に中断しない、など秒刻みで規定されています。これは1分経過するごとに、救命の可能性が10%ずつ失われることが根拠となっています。また心停止から除細動までの経過時間は3分以内が望ましいとされています。
3分以内にショックを行うには、パッド装着、波形解析から充電、ショックアナウンス、その後ショックボタンが押されるまで、熟練者を除き、十数秒の躊躇が入ることも考慮すると、これらに1分を要します。すると残り往復2分、つまり片道1分以内にAEDを取りに走る必要があります。AEDがどこにあるか、あらかじめ知っていなければ、なかなか達成は困難です。読者のみなさんも、自施設はもちろん、出入りする施設(クラブハウス、医師会館等)でのAEDの適正な設置と場所の共有について今一度ご確認下さい。

K.N